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◆第7回桜文大賞
●最優秀賞作品
山影  茂之(やまかげ  しげゆき)
          広島県東広島市・六十九歳

     「宮城県に住む大学時代の友人へ」

 加西君、暑中見舞いありがとう。「猛暑の今年は格別にビールがうまい」とあったが、畑仕事を終えたきみがうまそうにビールを飲む姿が目に浮かぶよ。
 ビールといえばアルバイトで新宿のキャバレーのボーイをしていたとき、紫煙と喧噪のなかをひたすらビールを運んだなあ。あのバイトのことはきみも心に残っていないかい。ぼくは桜の季節になると決まって「桜祭り」を思い出すんだ。造花の桜を店内一杯に飾り、杜交さんたちは全員ピンクのドレスに身を包む派手なイベントだったが。
 閉店後、明かりの消えたフロアの片隅にボーイたちが集まって疲れをいやすとき、暗闇の中に作り物の桜が意外に美しく浮き上がって、だれからともなく、「田舎に帰りたいな」「高校の入学式を思い出すよ」など、つぶやくような声がもれたよな。
 過去のどんなことも美しい夢のように思える年齢になった。お互い無理なく生きようぜ。                                                                     

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