| ◆第4回桜文大賞 | |
| ●最優秀賞 | |
| 「桜とおんちゃん」 佐藤節子/徳島県 「折ったらいかんぜよ」病棟から屋外へ通じる廊下の窓ごしに桜の枝に手をのばした途端どなられた。「桜折るバカ言うがを知っちょるろ」恐る恐る振り返ると見るからに“いごっそう”然とした老人が背後に迫っていた。 友人と花見を楽しむまえに長びく風邪の診察にと訪ねた病院で即入院を告げられた母さん。そればかりか娘の私まで付き添いで病院に泊りこむことになろうとは。おまけに連日の点滴で身体の自由を奪われ旧友との桜見物が果たせなくなったことを、母は八十五年の人生で最大の不幸だと身悶えして泣くばかり。 ならばせめて、一枝の桜をと手近な病院の庭での花盗人を思いたった矢先の無情な声だ。だが私としても、ここは絶対引きさがれない。腹をきめ理由を話すと、意外や意外おんちゃん「わかったぜよ。ええ親孝行しちゃりや。わしゃ、なーんちゃ見ざったきう折って病室で花見させちゃりや」 |
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