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◆第4回桜文大賞
●桜文大賞
天倉純子/神奈川県

「姉さん、桜だ!桜だ!」と、大きな造花の桜の枝を肩に担いだ叔父さんが、夜中に訪ねて来たのは、三十年以上も昔、母が腎臓病を克服して三か月ぶりに退院した日でしたね。
 いつも真面目で物静かな叔父さんが、花見酒に酔って、ひどく上機嫌だったのには驚きましたが、何といっても、その造花の桜が、駅前商店街の桜まつりの飾りを失敬してきたものと知った時のおかしさと困惑のほどは忘れられません。「姉さん、元気になってくれて良かったよ」と繰り返す叔父さんをよそに、誰もが造花の桜をどうするかで頭がいっぱい。
 捨てるわけにいかず、戻すなら今夜のうちがいいと、結局、兄と私の二人ですぐに返しに行ったのでした。の地名にふさわしい見事な夜桜の道を、大きな造花の枝を持って歩いたあの恥ずかしさ。後の日のよい想い出です。考えてみると、叔父さんは本当に母思いだったのですね。母亡き今、心温かい叔父さんを、しみじみ懐かしく思っています。

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