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◆第3回桜文大賞
●最優秀賞
お父さんへ
                     山本治美/愛知県

 お父さん、庭の隅に大きな桜の木があったのを、覚えていますか。車庫の隣にあった、あの桜です。自転車置き場のトタンの屋根に、薄紅の花びらを降り積もらせていた、見上げるように大きな、あの桜の木の事です。
 毎年春になると、お花見だと言っては、庭でよくバーベキューをしましたね。道路工事の時に枝が折られたと言って、憤慨した事もありましたね。お父さんもお母さんも、私も妹も、皆あの桜が大好きでした。
 でも今、あの桜はありません。車庫の横の草むらに、悲しい切り株となって、ひっそり埋まっているだけです。お父さんが脳卒中で倒れた時に、お爺ちゃんが泣きながら切ってしまったのです。病人のいる家に桜など縁起が悪いなんて、つまらない迷信でしょう?
 去年、庭に若い桜の木を植えました。来年はきっと花も咲くでしょう。だからお父さん、目を開けて、初孫と一緒にお花見をしましょう。
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