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◆第2回桜文大賞
●審査員特別賞
「母よりの手紙 中支の戦場にて」
     井出正人
     福島県川内村

 「今年も夜の森の桜がきれいに咲いたよ、元気でがんばれ」
 懐しい母から一辺の手紙がとどいた。
 昭和十七年五月当時激戦の中支最前線宜昌、手紙は出すも入るも検閲される前線。
 母からの便り、すり切れるほど幾度も何回も見る。早く帰ってこいとは書けない文面。 「今年も夜の森の桜がきれいに咲いたよ」、もうそれで充分。
 ゆうゆうと流れる揚子江のほとりで眺めながら故里を想い出す。
 ジーンと涙がつたわってくる。
 「揚子江の柳の若葉が三度青くなってきた」。
 それがせいいっぱいの返事であった。

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