戻る
◆第2回桜文大賞
●桜文大賞
「ジジイへ」
     小山謙二

 たぶん天国に居るとおもうくそジジイ、俺も酒飲みになってしまったよ。
 あんなに「くさくてイヤダ」と言っていたのに今じゃ、あんたと同じで休みの日には、朝からチビチビやっているよ。
 母ちゃんと仲が悪かったから、あんまり遊んでもらった記憶がないけど、一度だけ妹と三人で裏の山に行ったことがあったな。
 大きな古い山桜の下で、ばあちゃんのこしらえてくれたむすび食って、あんた水筒の酒全部飲んで寝ちゃってさ、桜の花びらに埋もれて起きてくれなかったよな。
 妹が泣いて、あんたの目を指で開けたんだ。そしたら怒って、いきなり俺の頭をたたいたの、なんでだよ。
 忘れたかい。
 俺は今でも桜の花びら見るとあの時の光景を思い出すぜ。

戻る