戻る
◆第1回桜文大賞
●桜文大賞
「桜の想い出」
     小暮晴美
     埼玉県・三四才・会社員

  あなた、今年も桜の花が咲きましたよ。あなたは、三分咲きぐらいの花が好きで、満開の時が好きな私とは、いつも意見が合いませんでした。
   花びら舞う桜並木の下、あなたのうでを取って散歩したかった私の夢を、花が散るのを見るのは、耐えられないと言って、一度もかなえては、くれませんでした。 「これからのものを、見るほうが、夢があって楽しいだろう」
  あなたは、言いました。だけど私は、未完成なものを見るよりも、完成された美の方に夢を感じてしまう。
  あなたが天に召されて一年目の春が来ました。今年は、あなたの想い出を胸に、二才になった長男と一緒に、毎日、桜並木の下を散歩しています。
  毎日大きくなるこの子を見ていると、あなたが言っていた『これからのもの』の意味が分かる気がします。

戻る